Book review
 

 

09年12月
追想五断章
米澤 穂信 著
集英社
評点:8点
古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件"アントワープの銃声"の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編
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 米澤穂信最新作。自分の中で最初から最後までスマッシュヒット炸裂中のお方です。昨年のはかない羊たちの祝宴は出ているのを忘れてた(汗)
 本当、この方の描くノンシリーズ系はほんとに救いがない話です。この物語をたどることで誰一人として良い気持ちにはなれない。読んで誰は得するんだろうと思いますが、恐らく自分みたいなのが喜ぶんだろうなと思い直す。本当主人公何一つ報われないうえ、今後の人生にも何一つ救いはなさそうだ。ああ、古典部の続きが待ち遠しい。
 因みに、今作はリドルストーリー(結末が読者の想像に任される物語)がテーマです。五つのショートショート。展開の切り返し方は相変わらず秀逸だと思います。特に、リドルストーリーというものをここまで上手く使える人はそうはいないでしょう。
 一回好きになると、公平な判断とはいえないかもしれませんが、世の中そんなもんだと思います。
 どうでもいいですが、謎は解けずとも展開だけは読めました! この人ならこう切り返すという悪い意味での想像する能力が上がっているのはいいことなのか、悪いことなのか。
ぐらシャチ
中村 恵里加 著
電撃文庫
評点:6点
 この春高校生となる少女・秋津島榛奈は、全国うっかりランキング10位以内にノミネートされる(弟・孝雄談)以外はごく普通の女の子。海辺で祖母の形見であるオカリナを吹いていた彼女は、急な高波にさらわれたところを「ある生き物」に助けられるのだが──?  そしてその「出会い」から、榛奈の日常は少しずつ波乱を含み始め、そして──。  『ダブルブリッド』の中村恵里加が贈る、かなり奇抜なボーイミーツガール&ファーストコンタクト・ストーリー、満を持して登場!
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お久しぶりのダブルブリッドの作家さんの作品です。思えばダブルブリッド一巻こそがラノベの中で一番好きな作品だったから感慨深いものです。それ以後の展開はえぐくてえぐくてたまりませんでしたが。とにかく、今回はどうかなーと思ってたら、やっぱりえぐくなってた(死)何でほのぼの始まり方から、こういう展開に持って行けるのだろうか、この作者様は。相変わらず、肉まで抉られながら戦う主人公を見ると、懐かしい気持ちでいっぱいになりました。
それにしても、これは一作で完結なのでしょうか。一応綺麗にまとまっていますが、全く解かれることの謎があったりしますが、はてさて。
サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY
河野 裕 著
角川スニーカー
評点:6点
「リセット」たった一言。それだけで、世界は、三日分死ぬ―。能力者が集う街、咲良田。浅井ケイは、記憶を保持する能力をもった高校一年生。春埼美空は、「リセット」―世界を三日分巻き戻す能力をもっており、ケイの指示で発動する。高校の「奉仕クラブ」に所属する彼らは、ある日「死んだ猫を生き返らせてほしい」という依頼を受けるのだが…。リセット後の世界で「現実」に立ち向かう、少年と少女の物語。
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乙一大絶賛とのことの作品。前々から興味あったのですが、ようやく読めました。  中々に寺宙の好みの作品だったように思えます。というか、例のごとくまた寺宙が好んで書きそうな物語といったところ。友人の男の最初の会話以降の空気よりも薄い存在ぶりは見に覚えがありすぎます。
 ちなみに、感想は一言でいって物足りない。  というよりも、壮大な過去らしきものを持っていて煙に巻く主人公というのが今の流行なのでしょうか?  いや、それは良いんですが。  それぞれのキャラの掘り下げが浅いから一巻だけで面白いと思えるような内容ではないというのが本当のところ。本音として、非通知くんと幽霊になりたいこの浅い掘り下げ自体必要性はほとんど感じられないです。サブキャラは猫っ子だけでいいのに。村瀬さんとかまじでどうでもいいですよと。
 能力については、なんとも言及しがたいところ。ぶっちゃけ何でもありとしか現段階ではいいようがないわけで、ほんのちょっとだけ制約があるだけというのは実はとんでも設定なのではなかろうか(その制約はどっちかというとルールみたいなものだけど)  能力は比べたときに効果が強いほうが強度が高いという理由らしいですが、リセットという能力との関係性が突き詰めると極めて難しいつくりになっています。  途中、声を主人公に飛ばす能力というのがリセットよりも強度が強いらしく、リセットされた世界でも効果が残っているらしい。 仮に非通知くんの能力が高ければ、何度リセットしようが強制的に殺し続けるということにならないとおかしいことになるはず。となると、最後に殺された主人公は繰り返ししに続ける運命なんじゃないのだろうか。どうだろうかと思いつつ。 リセットの強度が最強なら何の説明もいらない気がするのですが(それだと主人公の記憶が働かないから無理なのか)随分と複雑なシステムを作者様は選んだ様子な印象。  戯言と同系統なわりに、あっちは超誇大表現。こっちはものごっついのが簡単な扱いと凄い温度差を感じる年頃でした。
バカとテストと召喚獣
井上 堅二 著
ファミ通文庫
評点:5点
「こんな教室は嫌じゃああっ!!」アホの明久は叫んだ。ここ文月学園では、進級テストの成績で厳しくクラス分けされる。秀才が集まるAクラスはリクライニングシートに冷暖房完備だが、彼のいる最低Fクラスの備品はボロい卓袱台と腐った畳だけ。明久は密かに憧れる健気な少女・瑞希の為、組代表の雄二をたきつけ対クラス戦争を始める。それは学園が開発した試験召喚獣を使い、上位の教室を奪うという危険な賭けだった!?第8回えんため大賞編集部特別賞受賞作。
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これは、ラノベのギャグ小説最高峰。らしいけど、おじさんの思考には合わなかった模様。勢いだけのギャグって元々肌に合わないんですよねえ。ギャグに関しては肌に合わなかったらそれまでだから特に何も思わないのですが、中高生向きだとこれでいいんだろうなと思います。いや、主人公の実は左利きなんだとか時より上手いと思うことが入ってはいるんですけどね。というよりも2巻の表紙のヒロインが好きじゃないです。
這いよれ! ニャル子さん 3
逢空 万太 著
GA文庫
評点:測定不能
這いよる混沌ニャルラトホテプことニャル子ばかりか、生ける炎のクトゥグアのクー子までも居着くことになってしまった八坂家。地球の神々が不在の幻夢境をサポートするため、地球に駐留している二人だったが、日曜日は休むためにあるとニャル子にごり押しされ、真尋たちは買い物へと出かけた。相変わらずやくたいもない物ばかりを買うニャル子。生き物に憐憫と、食欲を露わにするクー子…。そんな二人のお守りにほとほと疲れた真尋は、なぜか帰路でクラスメイトの暮井珠緒と遭遇した。―しかも、ニャル子の邪神レーダーがビンビンに反応!これって…!?ハイテンション混沌コメディ第3弾。
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何というか気に入ったネタだけあげておきます。
・かに座とうお座が苛められていた。
・自分よりもレベルが高い悪魔は合体できない。
・ぐるぐるエンディング。
・赤毛の冒険家のどうでもいい話。
ロウきゅーぶ!〈3〉
蒼山 サグ 著
電撃文庫
評点:6点
プール開き目前な本格的な夏到来。いまだ慧心学園バスケ部のコーチを続ける昴は、試合という新たなる壁にぶち当たっていた。そんな中、一人泳げずに悩める愛莉。これを克服することでセンターとしての精神的成長を促すためにも、昴は文字通り一肌脱ぐことにしたのだが、「―さーて、今のうちに脱ぎ脱ぎっと」「いいから早く服を着なさい今すぐにっ」「ううっ。やっぱり…恥ずかしいかも」「おー、じゃあひなはこあらあたーっく」「だ、だめだようそんな格好でこんなっ」違う壁が昴の前に立ちはだかるのだった。そして、そこに忍び寄る女の影が―。
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コーチはロリコンという謳い文句の熱血スポコン小説第3巻。あれー。一過性の熱が冷めたのだろうか。主人公がいきなり口下手設定が追加されているんですが、典型的な駄目主人公化してる。それどころか、欠片も空気を読ますぎるんですが……。あれか。某人の言っていたようにラノベでスポーツはタブーだから徹底してコメディーに特化したというわけなのだろか。この巻は主人公のうざさ以外に特に見所がなかったような感じでした。ぶっちゃけ主人公一年後に現役復帰しても、選手としてはもう駄目だろうなあ(遠い目)。三井寿を目指すのか? 一巻の決意はどうしたよ。幼馴染の心配のほうが極めて当たり前すぎるせいで余計にそう感じる巻でした。
紫色のクオリア
うえお 久光 著
電撃文庫
評点:8点
自分以外の人間が"ロボット"に見えるという紫色の瞳を持った中学生・毬井ゆかり。クラスでは天然系(?)少女としてマスコット的扱いを受けるゆかりだが、しかし彼女の周囲では、確かに奇妙な出来事が起こっている…ような?イラストは『JINKI』シリーズの綱島志朗が担当。「電撃文庫MAGAZINE増刊」で好評を博したコラボレーション小説が、書き下ろしを加え待望の文庫化!巻末には描き下ろし四コマのほか、設定資料も収録。
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マヤさんが今年一番の出来であろうというラノベ。悪魔のミカタをパーフェクトワールド以降読んでいないので凄い懐かしい気がします。電撃の作者の中でもほとんどいない「センス」を感じさせる作者様なので好きだったんですが、読もう読もうと思ってはいるんですが巻数増えすぎてて……。
人がロボットに見える少女という美味しい設定はあくまで踏み台というのが凄まじい。平行世界を全て駆使して目的を果たそうとするという設定自体は目新しいものではないかもしれませんが、ラノベ的に勢い良くSFをここまでやれる人が他にいるかといわれれば恐らくいないんじゃないかなと思う。いるとしたら、谷川さんくらいかな?
単発の小説ということも考慮すると確かにラノベでは今年一番の出来の作品と言って確かに良さそうです。
レインツリーの国
有川 浩 著
新潮文庫
評点:7点
きっかけは「忘れられない本」そこから始まったメールの交換。あなたを想う。心が揺れる。でも、会うことはできません。ごめんなさい。かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった―。青春恋愛小説に、新スタンダード。
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有川さんの作品を真っ当に読むのって実は塩のまち以来ではなかろうかと思います。これは結構楽しかったです。何と言うか、関西弁のキャラクターが完璧すぎて結構鼻につきます。けれども、読み進めると何故か妙に苛々とさせてくれるこのキャラクター。読み手にいらっとさせるところがリアリティーがあるんだろうなあと納得。自分は善人であまり格好よくない男ばかり書きすぎているから参考にしないと。あと、読んでいて自分はやはり恋愛物好きだなーとしみじみ感じた一冊でした。面白かったです。
わたしを離さないで
カズオイシグロ 著
ハヤカワepi文庫
評点:5点
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。
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海外の小説は情景描写が細やかで参考になります。参考になるんですが、物語の進むのがハイパー遅いのがどうにも肌に合わなかったようでした。いや、本当に本当にじわじわと牛歩のような速度で進むんですよ。
世界観はSFでいいんでしょうか。クローン人間が臓器を提供するために作られている世界で、クローン人間の一生を描かれたもの(この文章は思いっきりネタ晴れですが)。時代は過去でもこういう風な世界という意味ではやっぱりSFなんでしょう。
最初から死ぬために生まれた世界。そして、ほとんどの「人」は長く生きようとはせずに仕事を辞めて、死への道を選ぶ。何処となく戦時中の人を思わせる、そういう意味でとても不思議な世界観だったと言えると思います。
あと、やっぱり海外の恋愛観というのはやっぱり肌に合わないなあとは毎度の感想。譲ることや純愛が美徳だという感覚に慣れると、自分の恋愛を押し通して我侭ばかり言う親友も、ヒロインが好きなうえ、愛情もないのに別の人と付き合う男も好感を持ちづらい……。世間はそんなもんだって分かってはいるんですけどね。
カンピオーネ!4〜5巻
丈月 城 著
スーパーダッシュ文庫
評点:7点
草薙護堂は限界を迎えていた。自らを取り巻く少女たちとの生活に心労を重ねる護堂は、逃亡を決意する。だが、そこに現れたのは戦女神・アテナ。今ここに神と神殺しの呉越同舟がなる!?一方、エリカと並び称される魔女・リリアナは剣の王・サルバトーレとともに竜の誕生に遭遇する。そしてそれは新たな神の顕現をも意味していた。
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うん。これは、普通に面白い。中々に安定した面白さを誇る良いラノベです。戦い方が毎度格好いいと思われます(ラグナロクみたいな、バトル描写ははっきり読み飛ばして終了な寺宙的に)ただ、5巻は少々ラブコメ要素というかハレム要素に傾き過ぎて、戦いはしょぼいのになってましたが。
しかし、一度カンピオーネになってしまい、神様ニ三人ぶっ殺したら、明らかに既存の神よりも強いと思うんですが、どうなんだろ。FATEととの違いは、英霊じゃなくて神様も一緒くたにされていることですかね。 展開的にもまだまだ序盤らしく、ここからどんな展開を見せるのか期待します。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 1〜4巻
伏見 つかさ 著
電撃文庫
評点:1巻6点 2巻6点 3巻7点  4巻7点
俺の妹・高坂桐乃は、茶髪にピアスのいわゆるイマドキの女子中学生で、身内の俺が言うのもなんだが、かなりの美人ときたもんだ。けれど、コイツは兄の俺を平気で見下してくるし、俺もそんな態度が気にくわないので、ここ数年まともに口なんか交わしちゃいない。よく男友達からは羨ましがられるが、キレイな妹がいても、いいことなんて一つもないと声を大にして言いたいね(少なくとも俺にとっては)!だが俺はある日、妹の秘密に関わる超特大の地雷を踏んでしまう。まさかあの妹から"人生相談"をされる羽目になるとは―。
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まあ、理性ある人なら誰もが思うことだけど。とりあえず、今作に限って言えば、この妹はただのめさめさ嫌なやつなだけじゃねえか。あららぎさんの言葉を借りれば、「それはただの性格の悪いヤツだ!」ですね。恋が生まれるとか死んでも思わないですが、この反応は父親に対してのものでしょ? 主人公の普通の善意に対してこの反応なら、良し、殺すってなると思いますが? 兄が変なやつならともかく、普通の人ですからねえ。ここまで嫌われるのは嫌われるので逆に異常な気もします。とりあえず、主人公の口調はどう考えてもニチャンネルやっている人なのもちと気になるところ。というか、ラノベの主人公見てていつも思うんですが、高校時代に部活してないのって都会では普通なのですかね? 部活をしない学生っていうのがいまいち想像出来ない寺宙です。 ここまでが一巻の感想で、そのまま引き続け全部読んだのでまとめてしまうことに。読みすすめると結構面白かったです。特に3巻の携帯小説の中身が楽しかったです。主人公のどっちつかずなオタクっぽい感じが妙に好感が持てました。しかし、この話4巻で綺麗にまとまっているのに、まだ続く、だと?
少年アリス
長野 まゆみ 著
河出文庫
評点:5点
夜の学校に現れた迷いの園、中庭の噴水で季節がすれ違う時、秋の使者が運んできた。群青天鵞絨色のメルヘン。第25回文芸賞受賞作。
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 ちょっとこのところ、たてこんでいたので久しぶりの読書。でも、間に何冊か読んだ気がするけどまあいいや。
 このジャンルは児童書、になるのでしょうか。アリスという少年と蜜蜂という名前のうえ、犬の名前が、耳丸ともはや謎過ぎる。解説見ると名前なんてあくまで記号ですーとあるからそういうものなんでしょう。でも、この主人公の名前をアリスにしたのは、アリスを一応モチーフにしているということなのか。物語としては男の子二人のちょっと不思議な体験といったところですね。
面白いか面白くないかでいうのは難しい作品です。だけど、雰囲気は悪くないので嫌いではないです。こういうのは雰囲気命みたいなところがあるのでそれでいいんだと思います。 と思うのですが、これ片方女の子だったら凄い良かったんだろうなと思う自分の業の深さを知った。 ただ、漢字で読めないのが多いのとわけのわからん表現が多いのはほへーと思いました。こういうばりばり描写書きまくるのは参考になります。
強運の持ち主
瀬尾 まいこ 著
文春文庫
評点:6点
元OLが営業の仕事で鍛えた話術を活かし、ルイーズ吉田という名前の占い師に転身。ショッピングセンターの片隅で、悩みを抱える人の背中を押す。父と母のどちらを選ぶべき?という小学生男子や、占いが何度外れても訪れる女子高生、物事のおしまいが見えるという青年…。じんわり優しく温かい著者の世界が詰まった一冊。
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 ……なんだろう。最近ボトルネックというか、米澤フィーバーを迎えていたせいというわけではないでしょうが、あまりにも普通な感じでした。 仕込まれたオチというかネタがことごとく超絶しょぼい。まあ、別に、一般文芸だからストーリーなんてあってないようなものでいいんですが、キャラクターも薄い。  こういうお話でしたら、文章の感性さえきらきら輝いていれば良いんですが、うーん、一般文芸の割には超平坦な文章でした。女性特有の深い心理というのが感じられないのがちょっと首を傾げるところ。  まあ、まったりと始まり、何事もなくまったりと読み終えることが出来るので、疲れたときに肩肘を張らなくて良いお勧めな一品ではあります。 
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸
入間 人間 著
電撃文庫
評点:5点
御園マユ。僕のクラスメイトで、聡明で、とても美人さんで、すごく大切なひと。彼女は今、僕の隣にちょこんと座り、無邪気に笑っている。リビングで、マユと一緒に見ているテレビでは、平穏な我が街で起こった誘拐事件の概要が流れていた。誘拐は、ある意味殺人より性悪な犯罪だ。殺人は本人が死んで終了だけど、誘拐は、解放されてから続いてしまう。ズレた人生を、続けなければいけない。修正不可能なのに。理解出来なくなった、人の普通ってやつに隷属しながら。―あ、そういえば。今度時間があれば、質問してみよう。まーちゃん、キミは何で、あの子達を誘拐したんですか。って。第13回電撃小説大賞の最終選考会で物議を醸した問題作登場。
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 戯言ぱくり戯言ぱくりと言われているかどうかはしりませんが、思っていた以上に戯言で驚きました。というか、作者どんだけ戯言好きなんだよというのか。PNから戯言しまくるぜっていうのはむしろ清々しいほどです。ちなみに、内容のほうはネタになった戯言といった趣でしょうか。まあ、西尾氏もすでにネタ人間とかしている気がしないでもないですが。何となく戯言よりも日日日に近かったかも。
一巻だからとかそういうのを取っ払って考えると、残酷描写を除き見所は感じませんでした。狙いすぎているキャラは戯言モデルですし(でも、今時斬新キャラとかないとは思うけど)、構成は普通といったところでしょうか。真面目な話、叙述とかともかくとして、殺人犯とヒロインとの構成の乖離振りは上手くないと思います。いや、どこぞの維新さんの二巻のように、うい。何も関係ないの斬新じゃねとかいう恐ろしい作者の狂気の発想をトレースしようとした結果なのかとさえ感じるくらいに。これはただの構成のバランス悪さだけだと思うけど。 あと、作者さんが自分に酔いすぎている感じとでも言いますか、主人公の語りが稚拙なのは少々いただけません。センスある語りがないんですよね、今のところ。ギャグとしてみれば、若い方には面白いのかもしれませんが。 インデックスのように文章耐えがたく、ハイパー月姫と呼ばれてからも盛り返して独自な方向に突っ走っている作品もあるようですし、こっから成長するのでしょうか?
モノレール猫
加納 朋子 著
文春文庫
評点:5点
小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが…。表題作の「モノレールねこ」ほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚など、日常にさりげなく現われる、大切な人との絆を描いた8編。
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 なんだか、加納さんにしてはかなりいまいち感が漂う作品群でした。 高度な日常の謎解きもなりを潜めて、中途半端な悲恋とかそういうのばかりだから、上手くないライトノベルの短編集みたいな印象を受けました。ななつのこのシリーズとか、手の中の小鳥みたいなのから、コッペリアみたいなのほうが好きです。
ひかりをすくう
橋本 紡 著
光文社文庫
評点:4点
智子はパニック障害の治療に専念するため仕事を辞めることにした。一緒に暮らす哲ちゃんと共に都心から離れて始めた新生活。細かな不安を抱えながらも、何気なく過ごしていく日常が、智子をやさしく癒してくれる。そんなつましい生活を続けるうちに、薬を手放せなかった日々がだんだんと遠いものへとなっていく―。ひたむきで一生懸命な「疲れた心」に響く一作。
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女性が一人働いて、ニート男の世話をしつつ、家賃17万円のところ(光熱費水道代抜き)に住んでいるというところが、気になって気になって内容どころの問題ではありませんでした。嫌ですね、社会人。しかも、その値段で古いところっていうんだから、ほりえもんクラスのところに住んでいるに違いないです。 実際に考えてみてると。40万円程度の給料があればまあ普通くらいは生活出来るみたいです。しかし、貯金も何年か分はあるみたいだから、50万円くらいは貰っていたんだろうと推察しているだけで終わりました。 内容は、仕事頑張りすぎたって意味ないよというものです。
09年6月
ボトルネック
米澤 穂信 著
新潮社
評点:10点
恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。
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米澤氏の作品は本になっているのはこれでコンプリート。 それにしても、何という青春小説! もう主人公の退廃さと他人を小馬鹿にしたスタイルは素晴らしすぎる。 話の内容も淡々と悪意が積み重ねられていく物で、最後の一文とか今まで読んだどの小説よりもバッドエンドで良かったです。本当の意味で全く救いのない展開でした。ただ、平行世界の姉の最後の叫びはどんな意味が込められていたのだろというのだけが気になります。主人公は、言葉通りの絶望を選んだのか、それとも……。この作品だけでも米澤さんに一生ついて行こうと思いました。
もう一度読み直して、色々思うところがあったのでやっぱり10点。これは青春小説の中では最高の絶望さだと思う。
犬はどこだ
米澤 穂信 著
東京創元社
評点:8点
開業にあたり調査事務所"紺屋S&R"が想定した業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。―それなのに舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして…いったいこの事件の全体像とは?犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。新世代ミステリの旗手が新境地に挑み喝采を浴びた私立探偵小説の傑作。
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バッドエンドと相変わらずの前評判なので、手にとっていなかったのだけど、文庫オチしてたから読んでみる。 これは面白かった。何処かの研究所のような死ぬだけバッドエンドの詰らなさが良く分かるバッドエンドぶりでした。なるほど、こういう終わり方か……。ミステリーらしく展開が面白かったと思わざるを得ない。 しかし、この方の主人公は九割同じ性格で嬉しい限りです。やっぱり他者なんか本心でどうでもいいと思えるのは人として憧れますよね。淡々と世界を俯瞰とする様は読んでいて心地良いです。しかし、ハンペーの扱いの酷さは神がかっている気がするのは気のせいでしょうか? 秋期限定でのサブキャラの扱いの酷さ(新規のだけど)が際立ってきましたが、なんか嬉しくなってきますね。ちなみに、この方は毎度郷土学について出てきますね。興味深い内容なのですが、何か専門で学んでいたんでしょうか。
向日葵の咲かない夏
道尾秀介著
新潮社
評点:5点
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
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何という異常性癖を持つ小学生が主人公なんでしょう、というのが全体を通しての感想。ふう、変態小学生の印象が強すぎてミステリーの内容自体をすっかりと忘れてしまいました。しかし、実際問題気になるのは妹に対しての叙述トリックが気になりました。あれは、途中で気づいていているだろうに延々と明かしてくれないし、意味のあるものでもないと思うのであまり入れない方がいいと感じたのですが。まあ、変態主人公の思考自体が物語のメインだと思いますので、細かなところは良いとします。ああ、気持ち悪かった。
世界画廊の住人
栗原ちひろ著
幻冬舎コミックス
評点:4点
記憶喪失の画家リンと出会った錬金術師見習いのセツリは、神殺しを目的とする深淵派のカルヴァスに追われ『世界画廊』に逃げ込む。異界への扉が絵の数だけ存在するその場所で、白い王女アイカの絵に心惹かれたセツリ。リンの不思議な力によって絵の中に入り、アイカの悲しい境遇を知って額縁の外に連れ出そうとするが…。やがて辿り着く、世界の禁じられた真理。その先にあるものは―。
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んー、絵の中の世界がテーマのお話。世界観自体は興味深いものの、出てくるキャラクターがほとんど自己陶酔型でうざすぎて好感がもてませんでした。ヒロインらしき王女はまっとうすぎて印象に残らず。まあ、とりあえず19歳の主人公が平然と13歳のアイカのことを好きだと言っている姿を見るとファンタジーでは普通としてもロウきゅーぶのようにロリコン騒ぎする必要はないかなと思います。
有川夕菜の抵抗値
時田唯 著
電撃文庫
評点:××点
「私は貴様らのような連中が大嫌いだ!」挨拶の第一声からクラスをドンびかせた転校生・夕菜には秘密があった。彼女は感情が高ぶると身体から電気を発してしまう特殊体質だったのだ。その体質故、過去に大切な人をケガさせていた彼女は、誰も自分に近づかぬよう虚勢を張り続ける。だが、なぜかこの高校には夕菜にちょっかいを出してくる変人ばかり。特に生徒会長の末長は、しつこく夕菜に言い寄るが…。孤独な転校生の少女とちょっと壊れた高校生たちが織りなす、笑って泣けて元気が出る癒しのストーリーを、ドタバタコメディ風味でお届けします。
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某人のデビュー作でした。しかし、何でまた相当初期作品をと思うのですが、何か色々あったのでしょう。読んでみて内容はさほど大きな変更はない様子でした。初期がハルヒ、会長が水前寺と言われていたのですが大分時期がたったので薄れていたのは良いことだと思います(個人的にイリヤは全然好きじゃないけど)。気になるのはやはり、大事なシーンで母親好調が目立ちまくっている点。ライトノベルということを考慮せずともこういうところで物語の重要なところを制御されている感が強く、主人公達のパートが分散されて目立たなくなっているところでしょうね。まさに、会長の独壇場でも良いくらいではないでしょうか? 一つ気になるのは終わり方……こういう終わり方したら続きは出せないと思うのですが、大丈夫なんですかね?
アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫
川原 礫 著
電撃文庫
評点:5点
黒雪姫との出会いにより、一回り成長したハルユキ。そんな彼のもとに、「お兄ちゃん」と呼ぶ見ず知らずの小学生・トモコが現れる。二人のいちゃいちゃする様子を見た黒雪姫の冷徹な視線がハルユキを貫く中、「加速世界」では、謎の事件が勃発していた。乗っ取られると精神を汚染され、敵味方関係なくデュエルアバターを襲い続けるという呪いの強化外装「災禍の鎧」。殺戮を繰り返す狂気のアバターを捕らえることができるのは、唯一の「飛行アビリティ」をもつデュエルアバター、「シルバー・クロウ」のみ。「鎧」討伐ミッションを課されたハルユキの運命とは!?第15回電撃小説大賞「大賞」受賞作、待望の続編登場。
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電脳加速世界第二巻です。個人的には一巻に劣る出来だったかなと思います。何というか歳のせいか、戦いの展開が異様に長いとだんだんと興味がなくなっていってしまうんですよね。裏切られたり、追いつめられたりと通常なら盛り上がる展開のはずなんですが、直前で米澤さんなんか読んでいるせいか自身も冷めた主人公視点になってしまっているのか? まあ、やったりやられたりがんばったりとラノベ的には盛り上がる展開です。続きはどういう風に展開していくのでしょうか? 期待して待っておくことにします。
ロウきゅーぶ! 1〜2巻
蒼山 サグ 著
電撃文庫
評点:9点
高校入学とともに部長のロリコン疑惑で部活を失った長谷川昴。ただでさえ小学生の話題はタブーなのに気づけばなぜか小学校女子バスケ部コーチに就任って!?「ん?ぱんつなら心配ないよ、ほらっ」「やっぱりっ、でか女なんだわたしっ!」「おにーちゃんの背中が気に入りました」「あの、そ、そろそろご指導の方を―」「いろいろ面白くなってきたわね、ふふ」個性的な少女たち五人の猛烈アピールに振り回されっぱなしながらも、それぞれの想いを守るため昴はついに男を魅せる!小学生の女子だって悩みは多いのです。そんな彼女たちに翻弄されまくっちゃうさわやかローリング・スポコメディ。
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何でクッパさんのを買いつつ、先にこっちを読んでしまったんだろう。ロリコンだからか? でも、15歳と12歳が付き合うってそこまで大騒ぎすることでは(おい)……テンイヤーズ――で、12歳と24歳の恋愛書いたしね、自分。ロリコンどころじゃない。 ……ろりキューブじゃなくて篭球すなわちバスケット小説ですね。あらすじが全般的におかしく、熱血スポコンが売りというもの。電撃でスポーツ物といえば、若草なんちゃらの野球部を思い出しますが、あれは結構好きでしたし。ていうか、構成まんまそのとおりですよね(汗)一巻が部の存続がかかった戦いで、二巻がラブコメって。二巻にもうちょい緊迫感があれば良かったんですが、これはこれでありなのかな。というか、凄い気に入ってしまったんですが(点数の通りに) しかし、どれくらい続くのかは分かりませんが、ラストはきっと主人公の先輩が付き合っていたという小学生と、主人公の教え子たちとの戦いか主人公の現在の行為が公にばれて(もしくは本当にロリコンになって小学生とキスでもしているシーンがばれるか)、どたばたといったところでしょうかね? ついでに幼馴染には次巻くらいでばれるだろうという予想。

ちなみに小学生男子竹中の可愛さは異常。 「なんでもねーよ。死ね」って可愛いすぎる。しかし、ツンツン頭という描写ですがイラストでは完璧可愛いだけの男の子でした。ありがとうございます。まあ、どの子も髪型以外の違いが全く分からないイラストですが(絶対デッサン変だよ) ちなみにコンって何の略?魂のこと?

しかし、二巻に出てきたべたべた幼馴染なんて一巻は苗字だけ出て、二巻でも数ページ出ただけとか何のために存在するんだろう。まるでインデックスのびりびりのようです。
09年5月
星図詠のリーナ
川口 士
一迅社文庫
評点:7点
父である国王の命を受け、辺境へと地図作りの旅に出た賢く若い王女「リーナ」と護衛の騎士たちは、正体不明の一団の襲撃を受け壊滅の憂き目にあったところを、流れの傭兵「ダール」に助けられる。何があろうとも任務を全うしようとするリーナと臨時護衛に雇われたダールは、妖魔をかわし、夜盗を退け地図作りの旅を続けていく中で宮廷の陰謀を掴むのだが、時を同じくして辺境の迷宮に眠っていた強大な何かが目覚める…。正統派ファンタジーの新鋭が贈る「本格マッピング・ファンタジー」。
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普通に面白かった作品。地図かきファンタジーっていうのが珍しかったのと、キャラクターが良かったです。姫様に何かあったら、この店は灰燼に帰すことでしょうと真面目に言う侍女が良いです。 ただ、最後のほうは何故だかひたすらバトルものになったのは残念でした。折角地図という良いネタだったのが霞んでしまったのがもったいなかったですね。これは続き出るのなら是非とも見たい作品です。
最後のパレード
中村克
サンクチュアリ・パブリッシング
評点:3点
東京ディズニーランドのキャストだけが知っている涙が止まらない物語。明日からの人生を変える1冊。東京ディズニーランドの開業に携わり、当パークのスーパーバイザーを約15年間つとめた著者が、キャストたちへ丁寧に語り伝えていた「ディズニーランドの心温まる出来事」。
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回収作品ということで出版社の思惑通り手に入れてしまった作品。 もうね。出てくる人の半分は子供死んでいるぜってないようです。99のなみだもこんな感じなんだろうな、きっと……(99のなみだもこういうふうな読者体験投稿方のノンフィクション風にしたほうが良かったかもね) 分かりやすい泣き作品としてはこういうのはありだと思います。一応ノンフィクション?ぽい作り出し、ショートストーリーの作成の参考になります。 ただし、最低なのは一つの話ごとに入る解説なのか、スタッフのかたのスタッフ絶賛言葉。個人的に裏方がでしゃばるものはくずです(最たるは富士見の編集部の解説とトリニータのフロント)。まあ、これも例に漏れずその点は最低極まりなかったですね。身内の身内を絶賛する言葉ほど気持ち悪いものはない。 ただ、思うのは、ここの話にのっているスタッフはもうとてもとてもとても素晴らしいスタッフしかいないようですので、あの本のスタッフならなーとか読んだ人に言われないか心配です。まあ、寺宙はディズニーに行く機会は一生ないから関係ないんですが。
天使が開けた密室 (創元推理文庫)
谷原 秋桜子
東京創元社
評点:6点
行方不明の父親を捜すため、倉西美波はアルバイトに励んでいる。そのバイト先で高額の借金を負うハメになり困惑していたところ、「寝ているだけで一晩五千円」というバイトが舞い込んだ。喜び勇んで引き受けたら殺人事件に巻き込まれて…。怖がりだけど、一途で健気な美波が奮闘する、ライトな本格ミステリ。期待のシリーズ第一弾!短編「たった、二十九分の誘拐」も収録。
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結構前の推理物です。 何と言うか、出てくる人が過剰なまでのくそ野郎集団というのも懐かしいきがします。友達二人以外ろくな人がいないって。 まあ、デビュー作ということらしかったのですが、推理自体は普通に簡単。でも話の流れ自体はおもしろかったような気がします。探偵役が万能すぎる。個人的に後ろにあった短編程度の話のほうが日常ミステリらしくていいんですけどね。 ただ、最初で、ぶつかって壊れたつぼが五十万で弁償しろって百発百中の詐欺なの(一二万ならともかくそもそもそんな高価なものを持ち歩く馬鹿は存在しない)と、主人公のことを天使と書くのは気恥ずかしくて死ねるかもです。
09年4月
RIGHT×LIGHT―空っぽの手品師と半透明な飛行少女
ツカサ 著
ガガガ文庫:小学館
評点:6点
右手でモノを握ると跡形もなく消える――だから、空っぽの手品師。そんなふうにクラスでは三文手品師のフリをする、それが僕の平凡な日常。の、はずだった…アリッサと出会うまでは。「あんたに選択の余地はないのよ。あたしに従いなさい!」屋上から降ってきた半透明の彼女にいきなり命令され、強引に肉体を依代にされてしまった僕……足元がふらふらする。全身がだるくて重い……待て。なぜ僕がこんな目に? 彼女は自分の肉体を奪った犯人を追って「方舟」からこの地上へ辿り着いたというのだが……。秘密の右手を持つ少年と世間知らずな魔法少女が繰り広げる異色マジカルコメディ!
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異色も何も超大王道だったわけですが。とりあえず、主人公の能力がどう見ても幻想殺しでした。ありがとうございます。まあ、そこのところはおいておいて、話の振り方、キャラクターが好感が持てます。悪役のくそやろうっぷりは良いですねえ。あのしつこさも中々好印象です。あと、主人公の能力の起源もちゃんとあったところが。でも、サブタイトルにもあるようにどうせなら、あらかた手品の一式は練習しているくらいのほうがキャラたちして良いと思うんですけどね。手品師というサブタイトルを付けるまでもないかなと思います。というか、サブタイトルがねらいすぎているのはちと恥ずかしい……とりあえず、どう見ても大王道なのですが、王道とは面白いからこそ王道なのであって、これは結構好感が持てるお話でした。アウラ読んだ時の印象のせいで、ガガガの学園物はいちいち陰湿な学園生活が好きなのかなと途中警戒してしまいましたが、まあそこまで酷くもなく。これは、続き買おうって思いました。何だかんだでラブよせバトル物が好きなのね、自分と改めて思うこのごろ。
ぴよぴよキングダム
木村 航 著
MFJ文庫
評点:6点
高校生森山拓は、ある朝目を覚ますと…頭の上に『ヒヨコ』が住み着いていた。『ヒヨコ』は高次元生命体ピッチパッチのピックルと名乗り、拓の頭を領土として宣言。伝統にのっとり、この未開の惑星・地球で恋をするのだという。お相手は美しく慈愛にあふれたチュルリラ姫?とりあえずピックルを頭に載せて登校した拓を待っていたのは、チュルリラ姫と、姫の領土になったクラスメート・磐座あかりだった!ピッチパッチの恋の儀式のために、あかりに近づく拓とピックルの前に、大富豪の御曹司と『融合』したピッチパッチ、『ブラ麿』が現れ、恋の行方は混沌と…。クールな笑いとほんわか涙がいっぱいの、ファンタジック学園SF登場。
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作者が文章書き慣れていることが凄い分かる文章でした。ラノベだけど一般文芸みたいだなというのが第一印象。まあ、やっていることがだめぴよこが頭の上にやって来てわめていているとか何とも言い難い内容なのですが。結果だけ見れば普通のボーイミーツガールっぽい(?)うーん、とりあえず最初の主人公の斜に構えた感は読んでいて分かりやすかったのですが、中盤からは全部ヒロイン視点なわけでして、そのヒロインが暴走しまくって状況整理が追いつかなくなる場面多数。いや、一人称で激情すればそうなるでしょうが、これが小説の難しいところですねえ。ただ、もうちょい主人公男のほうの掘り下げというか格好良さを押して欲しかったかなという印象です。
人類は衰退しました2
田中 ロミオ 著
ガガガ文庫:小学館
評点:7点
予測不能な不可思議物語、ゆるやかに加速中 わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は"妖精さん"のものだったりします。 そんな妖精さんと人間との間を取り持つのが、国際公務員の"調停官"であるわたしのお仕事。……なんですが。 高い知能を持つ妖精さんのまわりは不思議なことだらけ。理解不能なおかしな道具を創って、わたしの身体を小さくしたり。 現場復帰する祖父の助手さんのお迎えに、何度も何度も行かせたり。……そんなこと、報告書には書けません! えっ? わたしが一因? ではないですよ!? お疲れの脳に刺激と安らぎを与える1冊。
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こうしてみると、うまさが際だっていますね、この人。一巻とはまた趣向の違いが実に楽しい作りになっています。あー、上手いなー。主人公のノリが相変わらず心地良いですね。また時間がたったら3巻を読むことにしましょう。
リヴァースキス
佐野 しなの 著
電撃文庫:メディアワークス
評点:3点
ある朝、目覚めると俺は美少女になっていた。そして俺の体は、見知らぬ男に乗っ取られていた!?トモヨシと名乗るその男は交通事故にあい死亡。しかし、この世に残した未練のため、成仏できず俺の体を乗っ取ったというのだ。じゃあ、こいつの願いをかなえ、無事成仏させてやれば問題解決、と思いきや…こいつの願いは好きな女の子とキスすることで、しかもこいつは俺(美少女版)に一目惚れ!!おまけに俺の親友もこれまた俺(美少女版)に一目惚れしたりして…。かくして始まるドタバタ劇。第7回「電撃hp」短編小説賞"大賞"受賞作。堂々の登場です。
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まだまだ続くよ電撃が、男女入れ替え物。まあ、こってりのギャグ物で最後までそののりを貫き通されました。まあ、最初五ページからあまりの主人公の突っ込みのセンスのなさと子供さと身勝手さにしんどくなっていたので、斜めにずうっと読んでいたんですが、最後まで特に好印象になる要素はなく。というか、この主人公の言い分で好感を持てる人がいたら驚きなのですが……最初から最後までペースも変わらず同じギャグを繰り返すというのは、相当な手練れでも難しいんだろうなあとだけ思いました。ていうか、トモユキさん可哀想すぎだよ、これじゃあ。
ミステリクロノ
久住 四季 著
電撃文庫:メディアワークス
評点:5点
世界と規則、それが天使。時間と記憶、それが人間。その壁を跳び越えて、出会ってしまった二人の物語。
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また電撃かよというのは置いておきまして、トリックスターズの人。あの作品はオチが最低だったから続きは読んでいませんでしたが、何となくイラストで買ってみる(死)いや続きは評判良さそうでしたけどね。
時間を操作するという特殊なアイテムの説明だけで、物語の四分の三が過ぎてしまうミステリーというのは生まれて初めてかもしれません……。アイテムの特殊性は分かりますが、普通の人はどうなんだこれ。いくら続き物とはいえ、せめて事件と平行して物事は進めないと物語として失格な気がするのですが。いや、どっかの西尾維新氏のサイコロジカルは、一冊終わるまで殺人すら起こりませんでしたが(あの人にミステリー云々を説いても例にならない)肝心のミステリーの内容はまあ語るには当たらずといったところでしょうか。キャラクター自体は悪くないし、二巻を読んでみないことには面白いか面白くないかも評価出来ないですね。しかし、一冊で一個集めても最低六巻は続くのか、打ち切られないかな(汗)
ラキア
周防 ツカサ 著
電撃文庫:メディアワークス
評点:4点
その日。高校生の水戸貴壱は、セットした覚えのない目覚まし時計で起きた。ダイニングに降りると、何故か昨日とまったく同じ日が始まっていた。不審に思った貴壱は、「同じ日を繰り返している」ことを周囲に話すが、まったく相手にされない。困惑しつつも学校に登校するが、やはり状況は変わらないまま。そして、次の日も「昨日」と同じだった。そんな中、貴壱の同級生・上木麻衣も自分と同じ境遇であるらしいことが分かり…。リピートし続ける世界に巻き込まれた、男の子と女の子の物語。
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時間繰り返し世界(作中ではリバース世界という名前)を舞台にした、男女の恋愛話。
これは、うん。苦手かな。何というか、同じ設定で四回も似たような話を見せられるだけっていうのは辛いですね。まあ、寺宙的な好みの作風ではあるのですが、ヒロインが全員基本うざきゃらというのもマイナス点かな。男もまあ掘り下げが皆無なので何とも言い難いですが。しかも、この世界の案内人自体にも魅力は薄い。ロリコン毒舌とキャラ付けはしていますが、他の作品の道先案内人の魅力にはとうてい及ばずです。ブギーポップみたいに訳の分からないことを言っている人が何となく懐かしくなりました。しかし、続きも書かれているようですが、話のバリエーションと出てくるキャラクターの狭さが変わらない限り厳しいんじゃないかなと思います
シゴフミ―Stories of Last Letter
雨宮 諒 著
電撃文庫:メディアワークス
評点:6点
その少女が身につけているのは、不思議な杖と鍔付き帽子に、レトロな郵便配達夫を思わせるがま口の鞄。その鞄の中に入っているのは、ただの手紙なんかじゃない。黒い切手が貼られたその手紙は、想いを残して逝ったひとが大切なひとへ宛てて書いた手紙…死後文。今日も少女―文伽は相棒である杖のマヤマとともに死後文を、ひどく優しい奇跡を運ぶ。―亡き家族へ、友人へ、恋人へ。想いを乗せた最後の手紙を。雨宮諒が贈る、切なくて優しい物語。
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結構前のだけど、アニメ化もした話題の作品。シュプルの人か。
一話を読んだときは、私悲劇のヒロインキャラに、うわ地雷かなって焦りました。だって、死後の文の割にそれ以外にもサービスしまくりじゃないですか。反則くさいなーと思ってたら、二話になるとだいぶん薄くなり、三話のキャラクターは大好きでした。天才の父の子供で自らの才能にたいしての苦悩っていうのは自分好みです。その答えに対する、手紙を届ける人の言葉も良かったと思います。二話のフォローなしかよって思ってたらちゃんと三話でフォローしてくれましたしね。点数的には1話が5で2話が6で3話が7なので平均して6で。これなら続きを買おうかなあと思います。全4巻と短そうだし。
パララバ―Parallel lovers
静月 遠火 著
電撃文庫:メディアワークス
評点:5点
遠野綾は高校二年生。平凡な日々を送る彼女の一番の幸せは、部活を通して知り合った他校の男子生徒、村瀬一哉と毎日電話で話すことだった。何度も電話をするうちに、互いを友人以上の存在として意識し始めた二人だったが、夏休みの終わりに一哉は事故死してしまう。本来であれば、二人の物語はそれで終わったはずだった。しかし一哉の通夜の晩、綾のもとに一本の電話がかかる。電話の主は死んだはずの一哉。そして戸惑う彼女にその声は告げた。死んだのはお前の方ではないのかと…。二人が行き着く真実とは!?出会えぬ二人の運命は!?携帯電話が繋ぐパラレル・ラブストーリー。切なさともどかしさが堪らない、第15回電撃小説大賞「金賞」受賞作。
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失礼ながら自分がもっとも好んで書くタイプの小説だったので色々考えてしまいました(今書いているのも構造も大分似ている)ちょっと調子になった感想になるのは、申し訳ありません。この作品を読んだとき、まず思ったのはこれなら勝てるな、でした。別に次の作品が意味ではないですが、少なくともアクセルワールドとかみたいにあーあみたいな気持ち には全くなりませんでした。
この作品で上手いなと思ったのはただ一点、電話で死んだ彼と繋がったというもの。まあ、それも良くある設定ですが、丁寧に描けているという点では評価出来るかも知れ ません。ただし、始まった瞬間から、終わりの精確な形が見えきっており、そのままだったところは少々捻らないといけないと思います。終わりの一文なんてこのままではまさしく 劣化版乙一のままですよ。まあ、僕もああいう文を好んで入れてます、はい。だから、駄目なのか……。
文章はとくに秀でているところはなく、ソフトに描けている印象。しかし、ラノベ研でいつも言われるんですが、引っ込み思案じゃないと思いますよ、この主人公。普通に のりのりじゃない。自分この十倍は引っ込み思案に描いてますけど、まだ甘い言われますもの。ラノベの正義感キャラはいいんですが、こういう引っ込み思案系の作りはきわ めて楽観的ですよね。あと、中山さん素ですげーむかつきます。何だあいつはw
しかし、それよりも特に酷いと思ったのはサスペンス部分です。淡々と事実に迫っていっているだけで、どきどき展開も上手い返し方もありません。丁寧に展開していると言えば、まあ、そうかもですが。正直、自分は長いなあと途中で ずっとだれました。また、例に出して悪いのですが乙一なら半分か短編でまとめられそうな気がします。
自分にもその傾向はきわめてあるから手に取るように分かるのですが、犯人についてです。どうでもいい人達が犯人という、まさに仲の良いキャラを殺せない作者様の癖みたいなものでしょう。この物語において、こんな人たちが犯人でも特に何も思わない気がし ます。金田一ではありませんが、友人二人のどっちかが荷担していたほうがサスペンスとしては面白みが確実に増すはずです。後味の悪さや、そうしたときの展開の辛さなど が描けないが故に安易な展開に逃げたと推察します。いや、本当辛いんですけどね。ハッピーエンド主義者の寺宙とかには特に(練習として何度救いなく主人公をぶっ殺した か)
かといって、恋愛、切なさの分を強調しているかと言えば、そういうわけでもなく。後半はほとんど事実説明だけで展開されています。どうせなら、犯人が分かって、唐突な別れじゃなくて、しっかりと彼との別れのシーンを強調するべきでしょう。どたどたしているときに、はい、終わりって、どんだけ余 韻がないんですか……最後の微妙なアクションシーンははっきり必要ないと断言できます。特に五章で終わって、六章で切ないわかれかーと思っていたぶん、まだ続くのかよ とその上別れもないのかよ、と。うーん、ここら辺は中高生を意識した結果なんですかねえ。
しかし、作者様のここが他よりも優れている!っていうシーンが見受けられなかったのが気になるところです。何かしらの特長で押していかないと、このままではすぐに消 えてしまうかも……。感動系特有のシゴフミやシニガミのバラッドのように売りキャラクターがいないのも辛いところですし。点数は五点。四点に近いけど、こういう作品が増えるのは良いことなので頑張って欲しいですね。
いちばん初めにあった海
加納朋子 著
角川文庫
評点:7点
堀井千波は周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。その最中に見つけた一冊の本、『いちばん初めにあった海』。読んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙が…。差出人は"YUKI"。だが、千波にはこの人物に全く心当たりがない。しかも、開封すると、「私も人を殺したことがあるから」という謎めいた内容が書かれていた。"YUKI"とは誰なのか?なぜ、ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去の記憶を辿る旅が始まった―。心に傷を負った二人の女性の絆と再生を描く感動のミステリー。
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 加納さんの作品を読むのは久しぶりですが、今回はミステリー色はだいぶん薄くドラマ性のほうに重きを置かれていたようです。個人的には後ろの作品が好き。ただし、殺 人についていみありげにいってたのはさほど関係ないのか。この全てが答えに直結している作者様にしては珍しいような。しかし、この何が何でも恋愛に持っていってやるぜというスタイルは実に大好きです。やっぱり世の中恋愛ですよね。やはり、よしもとばななさんと並ぶほど文章が好きな 人です。
這いよれ! ニャル子さん
逢空 万太 著
GA文庫
評点:××点
深夜。八坂真尋は得体の知れない「何か」に追われていた。どんなに助けを求めても応える声も人もなく、彼は町中をあてどなく逃げまどうしかない。そして息も切れ、自らの最期を覚悟したその瞬間―「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです」―銀髪の美少女が、とてつもなく意味不明なキャッチフレーズとともに現れた。ニャルラトホテプ改めニャル子曰く、彼女は真尋を狙う悪の組織から、彼を守るために派遣されてきたというのだが…。こうして、真尋とニャル子の異常な日常が幕を開けた。這いよれ、ニャル子!負けるな、真尋!怒涛のハイテンション混沌コメディ。第1回GA文庫大賞奨励賞受賞作。
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何と言うか、一番感じたのは、他のギャグ小説と異なり、主人公もとい作者様の頭の良さが押し出された感じがするという、奇妙な感覚に捕らわれる異質のラブコメディー です。えーと、ラブ? まあ、作家様もインタビューでラブコメと言っているのできっとそういう内容なのでしょう。
実にけしからん内容ですので、一冊買っておいたほうがいいと思います。何と言うか、点数は測定不能です。スカウターが壊れます。
アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還
川原 礫 著
電撃文庫:メディアワークス
評点:7点
どんなに時代が進んでも、この世から「いじめられっ子」は無くならない。デブな中学生・ハルユキもその一人だった。彼が唯一心を安らげる時間は、学内ローカルネットに設置されたスカッシュゲームをプレイしているときだけ。仮想の自分を使って"速さ"を競うその地味なゲームが、ハルユキは好きだった。季節は秋。相変わらずの日常を過ごしていたハルユキだが、校内一の美貌と気品を持つ少女"黒雪姫"との出会いによって、彼の人生は一変する。少女が転送してきた謎のソフトウェアを介し、ハルユキは"加速世界"の存在を知る。それは、中学内格差の最底辺である彼が、姫を護る騎士"バーストリンカー"となった瞬間だった。ウェブ上でカリスマ的人気を誇る作家が、ついに電撃大賞「大賞」受賞しデビュー!実力派が描く未来系青春エンタテイメント登場。
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で、今更のように大賞作品を読みました。だから、書き慣れすぎていると――、こういう自分には絶対書けない作品を見ると凄い敗北感を味わえます。大賞の名前は伊達じ ゃないといったところでしょうか。まあ、電撃の大賞はあまり売れないことで評判なんですが。
とりあえず、太っている主人公というのがどうにも苦手なんで今まで敬遠してたのです。リアルでは遅くても、電脳の世界、反射神経なら誰にも負けないという設定は明らかに格好いいですね。というか、他の何はおいておいても、これだけは絶対に負けない! みたいなのは大好きです。とく速く、誰よりも速く、こういう展開なのはピンポイント。人間誰しも、最速と最強は目指してしかるべきなのですね。でも、ヘッドバットには今のところ何の価値もな いのか……。
何処をどう見ても続き物にしか見えないのですが、続きが待ち遠しいですね。黒雪姫は良いキャラです。
ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド
川原 礫 著
電撃文庫:メディアワークス
評点:8点
クリアするまで脱出不可能、ゲームオーバーは本当の"死"を意味する―。謎の次世代MMO『ソードアート・オンライン(SAO)』の"真実"を知らずにログインした約一万人のユーザーと共に、その苛酷なデスバトルは幕を開けた。SAOに参加した一人である主人公・キリトは、いち早くこのMMOの"真実"を受け入れる。そして、ゲームの舞台となる巨大浮遊城『アインクラッド』で、パーティーを組まないソロプレイヤーとして頭角をあらわしていった。クリア条件である最上階層到達を目指し、熾烈な冒険を単独で続けるキリトだったが、レイピアの名手・女流剣士アスナの強引な誘いによって彼女とコンビを組むことに。その出会いは、キリトに運命とも呼べる契機をもたらし―。個人サイト上で閲覧数650万PVオーバーを記録した伝説の小説が登場。
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懐かしのクリスクロス、じゃなくてゲームオーバーになったら現実で死んでしまう脳みそ完全接続オンラインゲームのお話です。同時にアクセルワールドのほうも読みまし たが、電脳世界がとても好きなのでしょうねこの作者さまは。
しかし、上手い。オンライン人気作家の名は伊達じゃなくて書きなれているなあと感心しきりでした。
主人公の悩みや葛藤も上手い半面、ヒロインの存在が何とも言いがたい。というのも、最初の会話だけヒロインの性格違いますから。ツン1デレ9と思えばいいのかなあ?  まあ、あまり愛を前面に押し出されるのも(君のためなら死ねるみたいなの)ちょっと気恥ずかしくなる年頃だからそういう風に感じたのかもしれません。しかし、続き物 らしいのですがどうやって続くんだろ、これ。ドットハックみたく違うシリーズとして展開するしか思い浮かばないのですが。
PS.サイトで圏内事件を読んでいると、主人公とヒロインの関係が程よくていい感じな気がする。この段階がないとね、うん。
カンピオーネ! 1〜3巻
丈月 城 著
集英社スーパーダッシュ文庫
評点:7点
神を殺した者は神の権能を得る。そしてその力を得た者は王者『カンピオーネ』と呼ばれ、覇者とも魔王とも称される。そんな高校生・護堂の求めるものは平穏な日々。しかし魔術師にして自称護堂の愛人・エリカがもたらすのは荒ぶる神との邂逅!?さらには、媛巫女・祐理も護堂に接近!?新たな神話を紡ぐバトルファンタジー開幕。
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神を殺し能力を簒奪した主人公が神や、主人公と同じ神殺しと戦っていく分かりやすいバトル物です。メインヒロインのキャラが良いのと、主人公の善人ぶりは見るべきと ころありです(もう一人の巫女さんヒロインはキャラの立ち位置はありだけどあまり好きではない)。
戦いに関しては、主人公の能力が制約多いとはいえ便利すぎる感がありますけど、押して押されてだし、切り札の切り方もそれなりなのは満足だと思います。主人公が安易な 馬鹿じゃないのは良いですよね。
でも、日本でもっとも競技人口が多い野球で中学時代に東京代表の四番に選ばれるのは超一流の才能と努力がないと無理です……。
付喪堂骨董店〈5〉―"不思議"取り扱いますつ
御堂 彰彦著
電撃文庫:メディアワークス
評点:6点
付喪堂に不釣合いに置かれたパソコン。先端科学の利器とは縁遠い無表情な少女はどう扱っていいかわからない様子です。わいわい騒ぐ様はのどかで平和そのものですが、それだけお店は暇なのでした。客と巡り合えなくても、アンティークとは巡り合えてしまうのが不思議なもの。こんな物がありました。懸賞が当たった、テストのヤマが当たった。そんな思いもかけぬ幸運をもたらすというバングルがあるのです。ですが、その見返りが周りの人の不幸だとしたら…。周囲が苦しむのを見て、人は幸せに思えるのでしょうか。あなたはいかがですか。
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今回の巻は結構いまいちだったかもしれません。今回はようやく敵?らしき存在と、ヒロインの過去みたいなものを匂わせているのが目的の巻でしょうか。でも、二巻のほ うがよっぽど匂わせててそのまま放置ですので、何となくまとめる気ないんじゃないのかなあと思ったり思わなかったり。
というか、この作者様は叙述トリックがすきなんだなあと思いつつ、思いっきりネタばれになりますが、今時正当な双子トリックってどうなのよとか思ってしまいます。そ して更なるネタばれですが、災厄を開けた人がパンドラというのも……。後半二話も今までに比べると安易さが目立ったかなと思います。三巻の三話と四巻の三話みたいに現 代舞台での不条理さ(特に恋愛)を強調した物語が好きなせいもあるかもしれません。あ、それと今回はそんなにバッドエンドレベルが低かったので、最後のお話もちょっと いつもに比べていまいちだったような気がします。というよりも、三話の最後であんなこと主人公に言っておきながら普通に戻るってどうなんですか先生!あと、ヒロインの 空回りぶりがいつもより数倍少ないです。
09年3月
太陽で台風
はむばね.
スクウェアエニックスノベルズ
評点:6点
幼い頃からヒーローに憧れてきた高校生・百瀬陸(ルヒ゛:ももせりく)。彼が河原で偶然助けた少女・常陸谷華(ルヒ゛:ひたちやはな)。初めて会ったはずなのに、華は陸のことを知っていた。そして、華の突然の告白…。はむばねが贈る、恋に不器用な少年と天真爛漫な少女の等身大の恋物、開幕!
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よく読む書評サイトさんで好評そうだからつい買ってみた。よくよく考えればこのノベルには良い思い出はないのですが、とりあえず最初の主人公の乗り突っ込みと文章の程度の低さでもの凄い地雷っぽいなと思いつつ読み終わりました。で、もう一回ぱらりと読んでいるんだから何でかそれなりに気に入っているようです。あれーー。とりあえず、今時の作品とは思えないくらいストーリー展開が古くさい。キャラクターが(特に主人公と友人)ラノベ研でよく見られるおたくの一人称なのは辛いです。それでも、主人公自体が愚かな行動をしていない分嫌いにならなかったのが良かったのでしょうか。
端的にまとめると、化物語の主人公とえろい人のストーリーみたいなものです。
とある飛行士への追憶
犬村小六.
ガガガ文庫
評点:7点
「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る!?―圧倒的攻撃力の敵国戦闘機群がシャルルとファナのちいさな複座式水上偵察機サンタ・クルスに襲いかかる!蒼天に積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。
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ちまたで評判とのことで読んでみましたが、これは面白かったです。何より主人公が格好良く、善人過ぎる。こんな出来たいい男そうはいないはず。最後の行動は本当に綺麗だと思いました。こういう直球作品が評価されているのは本当に嬉しいですね。気になるのは、ヒロインの性格が一気に変わりすぎ(戻りすぎ?)なのと、お話が一本調過ぎることでしょうか。特におそってくる側の視点が最後の一騎打ちまでないのはちと勿体ないかなと。それこそバレバレであるという絶望的な事実は早々にたたき付けても悪くはないと思いました。でも、そういう細かな点は所詮はいちゃもん。確かに、良作なラノベだったと思います。次のお話も買います。
ちなみに、水素電池で動いているとのことでしたが、そこは大学時代で研究しているところだから地味に知りたかったり。明らかに前時代的な文明っぽいわりに(戦闘機ってこんなにエンドレス動きに耐えれられるものなのかしらん。エースコンバットなら耐えられるけど(おい))色々オーバーテクノロジーな気がしたりしなかったり。
秋期限定栗きんとん事件上/下
米澤穂信.
創元推理文庫
評点:8点
あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。―それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい…シリーズ第三弾。
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個人的に男性一人称の理想と勝手に思っている方の新刊です。今回のお話は日常の謎がほとんどなく(珍しく寺宙が普通に思いついた)、主人公以外のよくわからん男の子が放課後放火魔を追いかけてました。まー、今までこの方の作品読んでいる人なら嫌でも推測がつくくらいの挫折というか敗北っぷりでしたが、まあ主人公ではないのでどうでもいいか。その後すらも語られないとは憐れすぎますけどね(インシミテルの同じようなキャラですらエピローグを用意されてたのに(涙))しかし、一巻二巻と人でなしだった主人公のジョーですが、いっそう輪にかけてリアル最低人間と化していて読んでいてとても楽しかったです。なんか、この主人公が楽しいぜって言っていること全部嘘っぱちでしょうという気分になってきます。やっぱりいいなあこの一人称。この地味にわけのわからんぼけをするのが寺宙もの凄く影響受けていることが分かります。
要約すると、小佐内さん最高ということですね。はい。でも、この二人の関係は、完璧にエンディングを迎えている気がするんだけど、続きどうなるんでしょう。このバッドエンドというか後味の悪さでは日本でも有数の作者様の場合、たたき落としそうだわ。まあ、古典部さえハッピーエンドで終わってくれるのならもはや何も言いませんが。
しかし、我孫子さんの人形シリーズの三巻も確か放火犯を追っていたのを何となく思い浮かべてしまいました。僕も三話を書くことがあったら放火犯を追おうと思います。
七つの人形の恋物語
ポール・ギャリコ.
角川文庫
評点:6点
お金も仕事も失った孤独な少女ムーシュは、言葉を話す七つの人形と出会い、謎めいた一座の長キャプテン・コックと旅と舞台を共にすることに。人形という存在を通して二人の間に芽生える深く純粋な愛の物語を、ストーリーテラーとしての抜群の才能で描いた表題作に加え、著者の名声を国際的にゆるぎないものにした名作「スノーグース」を、矢川澄子による静謐で感受性豊かな名翻訳で贈る、ギャリコ・ファン必携の豪華版。
・ ・ ・
これは題名になんか惹かれて、買いました。感想は中々面白かったです。ただ、スノーグースの終わり方は、でたまか三巻を彷彿とさせました。なんとまあと言いたくなる。七つの人形の話は、童話のはずなのにはっきりと冷酷なシーンが描かれていて良かったです。ただ、人形師の男性は最後まで嫌いでしたが、出てくる人形たち、特に狐さんが好きでした。
全然本作とは関係ないんですが、本買ったときについてたしおりに、「本の主人公は常にかっこういいか、美人を想像する。」ってあるんですが、スノーグースの主人公の容姿は、「ラヤダーはせむしで、おまけに左腕は萎え、しなびて、まるで鳥のかぎ爪のように手首から折れ曲がっていたのです」で人形のほうは「それはやせてぶざまで、大きな口と黒いみじかい髪をした女の子だった」まあ、翻訳だから仕方ないのですが、ここまで言うなよってくらいの描写ですよね。しおりを読んだとき真面目に吹き出してしまいました。
九つの物語
サリンジャー,J.D.
集英社
評点:1点
敏で繊細な感性を触媒にして、人間の内奥の深淵を象徴的に描く「バナナフィッシュに最適の日」、差別と偏見にみちたアメリカ社会の中で生きるユダヤ人親子のスケッチ「小舟のところで」など九編を収める自選短編集。無垢な心をめぐる葛藤、青春時代の憧れと不安などサリンジャーの作品世界を余すところ無く伝え、今も世代を超えた支持を受ける。短編作家として最も円熟した時期の傑作集。
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今日まで読書してなかったわけじゃなくて、この作品を延々とずっと何度か読み直していただけでした。何というか、難しい。さらっと見る感じでは、考えるんじゃない感じろという言葉を見受けてはっきりしました。ここまで面白くない小説があるとは思わなかったです。坊ちゃんとかよりも面白くない小説があるとは……。何というか、海外特有のむかつく人を馬鹿にした言い回しといらつくキャラクターのおかげで終始いらいらしつつ、展開がまるで分からない。解説でシーモアの天才性について語られても、あほらしすぎて話にならない(汗)「僕の足を見たいんだろう。足を見たといえ!」この言葉が天才の発せられる言葉なら世の中滅びれば良いよ。さすがに、名前を逆にしたというチープな叙述トリックだけでは仕掛けはないとは思いますけどね。
09年2月
つきのふね
森絵都著
角川文庫
評点:4点
あの日、あんなことをしなければ…。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいき―。近所を騒がせる放火事件と級友の売春疑惑。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く、奇跡のような傑作長編。
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オーヘンリーの短編集を読んでいたはずなのに、生まれて初めて紛失してしまったので、仕方なく森絵都を初めて読んでみることに。結構良い雰囲気。良い雰囲気なんだけど、一人あまりにも使えなさすぎる駄目大人がうざすぎた。心の病とはいえ、子供に迷惑をかけまくっている時点ですでに病院に縛り付けられないといけないレベルでしょう。子供の励ましにとちくるった回答とか終わりすぎてます。勝田くんがいなかったら耐えられなかったのが本音。いい人過ぎるよ勝田くん。まあ、女の子から見ればストーカーできもいひとかもしれないのはリアルなところなんですけどね。女性二人はまあ凄いどうでもいいかなと(結局主人公何も変わってない)。これだけだと5点ですけど、最後のチープなラノベ的展開に萎えたので−1で。しかし、この人の最高傑作はどれなんだろう。もう一冊くらいは読んでみたいけど、どれが良いのか難しい。
ラジオガール・ウィズ・ジャミング
深山森著
電撃文庫:メディアワークス
評点:7点
 あらゆるメディアの展開が禁じられているこの街の夜を、機材(アンテナ)抱えて駆ける少女・レコリス。彼女の正体は、禁じられたラジオ放送を市民のみんなに届ける「怪人」、J・O・L(ジャック・オー・ランターン)海賊放送局!  今夜も静かな屋根の上で繰り広げられるのは、なんとか「怪人」を捕縛しようとする軍と、身軽な彼女の追いかけっこ。もちろんそっちも大変だけど、街の全土を巻き込んだ、さらに大変なことが彼女に降りかかろうとしていて……!?
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 ラノベの棚を端から端まで見てて、これがなんかタイトル一番惹かれたので購 入。何となくハガレンを彷彿とさせる舞台設定ですね……全体的に薄い。いいお話なのですが、これはもう少し長くないと魅力が出ないお話だと思う。せめて、上下は必要かと。 短編的にあと一話、五十ページくらいとってでも、軍と民間のスタンスをしっかり確立して欲しかった。それこそ、最初のイラストページみたいなやりとりがワンシーン絶対必要。
 でも、クライマックスシーンでのヒロインの呼びかけは感動しました。ちょっとやって生まれたものではなく、十年掛けてやってきたものの重みのおかげの気がします。そして、そのことが今回は良かったものの悪しきこととしっかり見ているところが好印象でした。今のおろかなマスコミに言ってやって欲しいですね。素直に感動的なお話であることは好印象。ただ、悪役の自身への酔い方と言い分が気持ち悪いのはだけはちょっといただけないところでした。ていうか、頑張る女の子が途中されたことは結構ショック。簡単に描かれてたけれどえぐいよボブソン。
 続き、もしくはこの作家さんの別のお話が出たら買いたいなと思いました。点数は期待度も含めてだったのですが、調べると2006年から一冊も出てないってことは、まあ、そういうことなんでしょうけどね(涙)
追記:作者さんのブログみたら、一言売れなかったことについて書かれてた。しかもそれだけだった。せ、切なすぎるorz
死神の精度
伊坂幸太郎著
文春文庫
評点:3点
CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。
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うん、凄く面白くなかったです……。あらすじの通りの短編集なのですが、別に上手い構成のものがあるわけでもなく、キャラも別に個性があるわけでもなく面白くないです。設定の死神とか、ラノベで飽和を超越するくらい有りふれていますが、この作品極めつけは、主人公が死神である必然性がほぼ皆無なのも腹立たしい。良かったのは文章ですかね、やはり。ううん、伊坂氏のオーデュボンの祈りは結構面白かったのですが。どうでも良いのですが、この作者さんオリエント急行の殺人が好きなのですかねえ。前のチルドレンにも同じような構成のものがありましたが。
夜は短し歩けよ乙女
森見登美彦著
角川文庫
評点:8点
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する"偶然の出逢い"にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。
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最初は、一章は先輩の一人称の鬱陶しさに辟易してたんだけど、二章に入るとこの先輩ただの馬鹿ではなく、凄く行動力のある馬鹿だと判明したためここで一気には反転しました。うわ、凄い面白い。こういうキャラのように、彼女のためなら崖を突っ走るとか良いですね。三章もそのペースで面白く、四章は悩んでいるだけだったからいまいちだったと言ったところ。先輩ラブの印象で読んだら一章も面白く感じるんだから世の中不思議な物ですね。あ、黒髪の乙女も天然で凄く面白かったです。
人類は衰退しました
田中ロミオ著
ガガガ文庫:小学館
評点:6点
わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は"妖精さん"のものだったりします。平均身長10センチで3頭身、高い知能を持ち、お菓子が大好きな妖精さんたち。わたしは、そんな妖精さんと人との間を取り持つ重要な職、国際公務員の"調停官"となり、故郷のクスノキの里に帰ってきました。祖父の年齢でも現役でできる仕事なのだから、さぞや楽なのだろうとこの職を選んだわたしは、さっそく妖精さんたちに挨拶に出向いたのですが……。田中ロミオ、新境地に挑む作家デビュー作。
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もう一冊のアウラだったか何だったか忘れた方を読もうとして、ものすごく嫌いな人だなと最初の方で認識していました。でも、この作品はおもしろかったです。歩く詐欺こと主人公の図太さと超存在の妖精さんたちののほほんとした生活観は癒し系です。妖精さんは他視点で見るよつばみたいな感じかな。でも、二巻は読むか微妙。何となく同じようなギャグだとすぐに飽きそうかもと思ってしまいました。
MAMA
紅玉いづき著
メディアワークス
評点:6点
海沿いの王国ガーダルシア。トトと呼ばれる少女は、確かな魔力を持つ魔術師の血筋サルバドールに生まれた。しかし、生まれつき魔術の才には恵まれなかった。ある日トトは、神殿の書庫の奥に迷い込んだ。扉の奥から呼ばれているようなそんな気がしたから。果たしてそこには、数百年前に封印されたという人喰いの魔物が眠っていた。トトは魔物の誘いにのった。魔物はその封印から解き放たれ、トトは片耳を失った。そして強い魔力を手に入れた―。これは、孤独な人喰いの魔物と、彼のママになろうとした少女の、儚くも愛しい歪んだ愛の物語。第13回電撃小説大賞"大賞"受賞『ミミズクと夜の王』の紅玉いづきが贈る、二つ目の"人喰い物語"。
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最新刊も出たようなので積み本崩し。読んだ感想は、ふつー、といったところでした。ミミズクほどの純粋さがなくなったせいか、悪くはないんだけど当たり障りのない感じになった気がします。や、前にミミズクの感想で出てくる人は皆善人すぎると言いましたが、やっぱりあれのほうが味があるのかな。でも、こういう感動系ファンタジー自体の存在が今は貴重なんですよねえ。ライトノベルだと特に。最新刊の表紙がアヴェンジャーに見えて仕方ないのですが、はてさてどうなるのかな。ていうか、人食いシリーズだったんだ、一応……ミミズクで人喰っているのいたっけ?夜の王食べてなかったせいで、名前だけのような気が……。
翼の帰る処上下
妹尾ゆふ子著
幻冬舎
評点:7点
「過去を視る」力を持つ帝国の史官・ヤエト。病弱な彼は、赴任先の北嶺で地味な隠居生活を送ることを夢見ていた。しかし、政治に疎い北嶺の民に悩まされ、さらには北嶺に太守として来た勝ち気な皇女に振り回され休まる間もない。だが、北嶺を知るにつれ、ヤエトはこの地に帝国の秘密が眠ることに気づいていく…。歴史の光陰が織りなす壮大なるファンタジーロマンの扉がいま開かれる―。
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最近ファンタジーばかり読んでいる寺宙です。キャラクターは中々魅力的です。主人公が36歳で病弱で戦闘に使えず、隠居願望ありで、歴史が好きで、頭は良いんだけど周りは馬鹿が多い……ようするにヤンウェンリーっぽいと。こういうキャラが魅力的でないはずがありません。出てくる皇女なども魅力的だったかなと感じました。世界観としてもファンタジーとして魅力的に描かれていたと思います。伝説や歴史が物語のポイントなるために色々と興味深い設定ですね。ただし、主人公の持っている能力が過去視であるために、唐突に始まる場面展開について行きにくいところと、上下巻で展開の変わりぶりに少し?となってしまったのが少し気になるとこでしょうか。シリーズ物なので続きが出たら買おうと思います。