Book review
 

 

過去感想


10年2月
時計じかけのオレンジ 完全版
アントニイ・バージェス (著)
乾 信一郎 (翻訳)
ハヤカワepi文庫
評点:6点
近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的な毎日にうんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは超暴力。仲間とともに夜の街をさまよい、盗み、破壊、暴行、殺人をけたたましく笑いながら繰りかえす。だがやがて、国家の手が少年に迫る―スタンリー・キューブリック監督映画原作にして、英国の二十世紀文学を代表するベスト・クラシック。幻の最終章を付加した完全版。
・ ・ ・
 キャラクターは実に不快で自己中でろくでもない奴らですが、不思議な魅力に満ちた作品です。だから、面白かったというよりも興味深いというほうが強いです。好きじゃないけど手元には置いておきたい作品といいますか。こういう暴力的な小説はいつかは書きたいと憧れてしまいます。
一番興味深かったのは、途中主人公の人格改造が行われていたシーン。それに対する世間の反応。
あと、印象に残ったのは、「善しか元々選べなくなったら人じゃない。自分で選べるからこそ意味がある」という部分。次に書く長編がまさにそういう内容だったせいかなんだかどきどきしてしまいました。
ただ、18歳で俺もう歳だぜ、若くないとかいうのだけは勘弁してください!
夏への扉
ロバート・A. ハインライン (著)
福島 正実 (翻訳)
ハヤカワSF文庫
評点:9点
ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に大切な発明までだましとられたぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ。そんな時、「冷凍睡眠保険」のネオンサインにひきよせられて…永遠の名作。
・ ・ ・
おお。これはごるごっさ面白い。 ついついラブストーリーが読みたくなってしまったせいで、SFを読むぞと思ったのにSF要素が薄い作品を選んでしまいました。ていうか、時計仕掛けのオレンジも別にSFというわけではないのか。でも、時間SFといえば日本では必ず挙げられるほどの人気の作品ですし、実際とっても面白かった。
内容は、天才技術者が栄光から騙されて挫折、コールドスリープで未来に送られてしまうけど色々頑張って、最後は逆転と非常に分かりやすいストーリー展開を持っています。
非常に参考になったのは、最後の最後まで登場しないヒロインを思う主人公なわけですが、それでいて特に悪印象を持たせなかったのが凄い。まあ、キャラの魅力よりもストーリーの面白さで持って押しているからこそのことなんでしょう。行方不明になった幼馴染を探すという作品を自分みたいなぺーぺーが書いたときは、「ヒロインがどんな人が分からないので感情移入できません」とぼろかすにされたのは良い思いでです。いやはやさすがの傑作でした。
変身
カフカ (著)
高橋 義孝 (翻訳)
新潮文庫
評点:5点
平凡なセールスマンのグレゴール・ザムザは、気がかりな夢からさめたある朝、一匹の巨大な褐色の毒虫へと変わった自分を発見する。理由もなければ原因もない。その日から家族との奇妙な生活が始まった―。非現実的な悪夢をきわめてリアルに描き、現代人の不安と孤独をあらわにした最高傑作。
・ ・ ・
今更のように読みます。 解説を読む限り、これは作者の子供の頃の自己投影という代物らしいですね。淡々と進み、救いなく終わります。いや、主人公以外は解放という救いなのですが(新しい朝が来たてきなむやみなまでの爽やかさ)……これは一種のホラーなのかと勘違いしてしまいそうな現代っこです。
面白いかといわれたら欠片も面白くはありませんが、短いしなんだか不思議な気分になるので読んで損するような作品ではないと思います。
ご主人さん&メイドさま―父さん母さん、ウチのメイドは頭が高いと怒ります
榎木津 無代 著
電撃文庫
評点:4点
メイド大好きオタク高校生・五秋陣こと「ご主人さん」と、傲岸不遜な金髪美少女「メイドさま」との主従逆転ドタバタラブコメ、第16回電撃小説大賞"銀賞"受賞作登場です。
・ ・ ・
 まあ、うん。馬鹿小説でした。やっぱ、こういうどストレートな作品も需要は捨てがたいなと改めて思う一品です。
 しかし、誰もが書くような作品に思え、取り立てて評価するようなところがない気がするんですが、何処が評価されたのでしょうかね? 勢い? まあ、らけんでは好まれそうではありますが。
 年配者である自分にはちと敷居が高いジャンルですね。でも、大学の頃はメイドさまみたいなキャラ本気で書こうとしていたんですよ。忍者と戦わせたかったから。
神様のいない日曜日
入江 君人 著
富士見ファンタジア文庫
評点:5点
十五年前。神様は世界を捨てた。人は生まれず死者は死なない。絶望に彩られた世界で死者に安らぎを与える唯一の存在"墓守"。「今日のお仕事、終わり!」アイは墓守だ。今日もせっせと47個の墓を掘っている。村へ帰れば優しい村人に囲まれて楽しい一日が暮れていく。だけどその日は何かが違った。銀色の髪、紅玉の瞳。凄まじい美貌の、人食い玩具と名乗る少年―。その日、アイは、運命に出会った。「私は墓守です。私が、世界を終わらせません!」世界の終わりを守る少女と、死者を狩り続ける少年。終わる世界の中で、ちっぽけな奇跡を待っていた―。大賞受賞作登場。
・ ・ ・
 神様が飽きて世界を放りだしてしまったが故に人がしななくなってしまった世界。それを唯一埋葬できる存在の主人公の少女。しんでも復活し続ける男。物語は幸せに暮らしていた主人公の村人が皆殺しにされるところから始まります。
 何と言うか、寺宙好みの世界観なんですが。何でしょう、この果てない微妙感は。文章はこなれている感じはしません。まあ、ぶっちゃけ下手なんですが、それは別にいいんです。  キャラが全般的にその場ののりでしか動いていないのが耐え難いです。特に、サブキャラ系にそれが顕著に現れています。別の墓守も猟師さんも、ねえ?悪役の適当さとか逆に驚きます。ある意味ここまで適当な悪役、西尾維新はおろか日日日の作品でも見たことないかもしれない。
あと、物語の展開させ方もいまいちです。冒頭部からの変化にかけては良いのですが、皆殺しにした人についていくとか、「えええ」ってなるし、不死人が捕らえられるシーンとか、ちょっと、こうもう少し上手いこと出来なかったんですかね……。思いつきで書いているんじゃないんですから。
 それでも、何となく古きよきファンタジーというストーリーにしようとしたところは好みです。正統派ファンタジーがまだ闊歩できるということを考慮すると空白はファンタジア文庫に送りたいなあ。
どうでもいいんですが、ヒロインの途中のイラスト変すぎ。
ヴァンダル画廊街の奇跡
美奈川 護 著
電撃文庫
評点:6点
人は誰もが、心の中に一枚の絵を持っている―。アート・テロリスト『破壊者』の目的とは!?第16回電撃小説大賞金賞受賞作。
・ ・ ・
何となくイメージ的に金賞は雰囲気重視のを、銀賞はとりあえず勢いがある系を選んでいるきがする電撃大賞。この作品も雰囲気系。 好きなんだけど、何となく印象に残らない感じ。前に好きだぜっていってたラジオガールウィズジャミングに雰囲気が似てます。こういうのってそこまで評判にならないことが多いから無駄に心配してしまいます。頑張って欲しい。ただ、昨年のパララバの人もようやくメディアワークス文庫から新刊出たし、この人もそっちに流れていきそうな雰囲気はあります。
何となく少女、ヒロインキャラが固まっていない印象が強いですかね。楽観的なんだか無表情キャラなんだか切迫感が強いんだか。楽観的なこと言っているシーンとか必要なんだろうか。最後の父のエピソードの手前に添えて欲しいのはハルクよりも彼女自身ではないかなと思うのですが。
物語上、やっていることはキャッツアイを彷彿とさせますが(目的込)やや泥棒手段は都合が良すぎるのでそういう方面での楽しみは期待できません。もっとも、雰囲気系なのでそんなの求めている人はいないと思いますが(思えば塩の町にそれを求めていた自分は青かった)、五年も前の機械がオーバーテクノロジーで超絶スペシャルなAIを主人公が持っていたり、五十年だか前の機械が性能よさげなのは物語の都合上っていうのは感じました。
温室デイズ
瀬尾 まいこ 著
角川文庫
評点:5点
みちると優子は中学3年生。2人が通う宮前中学校は崩壊が進んでいた。校舎の窓は残らず割られ、不良たちの教師への暴力も日常茶飯事だ。そんな中学からもあと半年で卒業という頃、ある出来事がきっかけで、優子は女子からいじめを受け始める。優子を守ろうとみちるは行動に出るが、今度はみちるがいじめの対象に。2人はそれぞれのやり方で学校を元に戻そうとするが…。2人の少女が起こした、小さな優しい奇跡の物語。
・ ・ ・
寺宙、根暗で憂鬱な話ばかり書くと思われているけれど、苛め系って描いたことがなかったりします(人殺しの子供ではさらりとかかれてますけどね)。ラノベってどうしても、デフォルトされているせいか極端に描かれているのが嫌いなんです。苛めはひどいもんっていうのは分かりますけど、そこまでなのは滅多にねえ!と思ってしまっているんでしょうね。
この作品の場合は視点変えてしまっているからなんだかすわりが悪い気分になってしまいます。おっとり優等生が学校から逃げている間も主人公はいたぶられているだから、なんだかたまらなくいやな感じです。主人公頑張ってるのに、主人公頑張っているのに……という気分になるですよ。主人公のこと大事だと思うけど、どうしようもないというのがたまらなくリアルなことなんでしょうね。本読んでまでリアルなんざみたくねえ!っていう方の気持ちが良く感じでした。というか、おっとり優等生が幼馴染にしてたのって物語的にはほとんど意味もなかったんですね……。
ていうか、あらすじ見てびびった。三月のライオンを優しいラブストーリー(今後どうなるかはしらないけど)とか書くくらい嘘だ。優しい奇蹟なんて起こってないし、片方は明らかに役に立ってないですよ、どう見ても?
シュガーダーク 埋められた闇と少女
新井 円侍 著
角川スニーカー文庫
評点:6点
えん罪により逮捕された少年ムオルは、人里離れた共同霊園に送られ墓穴を掘る毎日を送っていた。そんなある夜、自らを墓守りと名乗る少女メリアと出逢う。彼女に惹かれていくムオル。だが謎の子供カラスから、ムオルが掘っている墓穴は、人類の天敵・死なずの怪物"ザ・ダーク"を埋葬するものだと聞かされる!混乱するムオルは、さらにダークに殺されるメリアを目撃してしまい―!?第14回スニーカー大賞大賞受賞。
・ ・ ・
ちまたで話題のスニーカー大賞作品です。ファンタジア大賞と同じく、墓守、不老不死がテーマの作品のようです。いや、ふた開けば全然内容事態は違うのですが、今密かに墓守ブームでも来てるんですか?世間が不景気になったら、暗い投稿作が増えるっていいますし、それが正しいなら来年の作品なんか暗いのしか残らないじゃん(違います)
キャラは普通。というか、寺宙でいう雰囲気系のキャラ。可もなくといったところ。とはいえ、純真無垢なヒロインというのは今の時代どうなんでしょうね。嫌な大人になったなと思ったのは、こういうヒロインは男性にとって都合いいよなあとか感じてしまったところです(そう考えるとやはりアホの子が好きなんだろうか?)
物語はスタンダート。閉塞世界であることを踏まえても心理は丁寧に書かれていると思います。謎の部分にはさほど興味は惹かれなかったですかね、最後に出てきたあれこれ設定はやや都合のよさを感じてしまいました。
後以下雑感。
・この世界以外全く描写しないのは潔い。
・途中のイラストはまじもんで人肉食べてると思いました。
・最後の仮説は本気で都合が良すぎてびびる。
・眠り姫にキスをするのはスニーカー大賞には必要なんです(違います)
まとめると、良くも悪くもスニーカーといったところでしょうか。 しかし、続きが出るらしいですが、この場から動くことが出来なくなった主人公とヒロイン。物語を膨らませようがないのをどうするかが気になるところです。
完全失踪マニュアル
樫村 政則 著
単行本
評点:4点
イヤになったら逃げろ! 誰の手も借りずに、計画の準備から失踪後の生活までを行うための方法や注意点を網羅した。本書のポイントを押さえるだけで、「完全失踪」ができることを堅く約束する。
・ ・ ・
失踪物も書いてたので読んでみたけれど、この書籍自体にはほとんど真新しいことは書いてませんでした。特に94年発行だから、内容が古いのがネックですね。携帯電話、GPS、パソコンなどについて何も触れられていなかったのであんまり役に立ちません。それに長期失踪に関しては、今時出来るのかなとか思いますし、住み込みの仕事なんてこの不景気ほとんどないでしょうしね。
犯人は知らない科学捜査の最前線!
法科学鑑定研究所 著
ナレッジエンタ読本24
評点:7点
ドアの開閉、ノートの落書き、ケータイの留守電、コンビニの防犯カメラ―。普段、当たり前の行動をしているだけで、私たちはあらゆる場所に「痕跡」を残している。犯罪者もまたしかり。一見、何もないように見える犯罪現場から、わずかな手がかりを頼りに真実を解き明かす。それが科学捜査である。驚異的なスピードで発展を続ける科学捜査、その最先端に迫る驚きの一冊。
・ ・ ・
これは2009年発行なだけあって内容も新しいし面白かった。DNA鑑定に始まり、筆跡鑑定とか監視カメラ、交通事故判定とか具体例交えて説明してくれますし、専門用語は欄外で説明してくれてますので分かりやすい。基礎的なことをすでに把握している方は必要ないでしょうけど、名前しか知らない的な人が最初のとっかかりに読むのにはお勧めです。
犬神家の一族
横溝 正史 著
角川文庫―金田一耕助ファイル
評点:6点
信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような条件を課した遺言状を残して他界した。血の系譜をめぐるスリルとサスペンスにみちた長編推理。(中島河太郎)
・ ・ ・
普通に初めて読んだ金田一のおじいちゃんの話。推理自体は古臭いんで特にどうでもいいんですが、人物関係の愛憎が物凄かったです。ええ、ここまで人を憎めるかと言わんばかりの内容で、その点は間違いなく圧巻だったと思います。おばさんまじもんで怖いです……。自分がもっとも嫌いな人種ですので、自分が書くなら間違いなくぼろぞうきんみたいにして殺すなあと本気で思います。
 ちなみに米澤穂信のインシミテルでタマヨのような役柄で美しい連呼されてた人がいたんですが、これがモデルなんでしょうかね。何か妙な共通点を感じました。
 思いのほか、金田一探偵空気でびっくりしました。ことあるごとにびっくりしてるし、ポアロのように行動の意味に気付いて黙っているわけでもない。というか、最後の微妙な引っ掛け以外別にいなくても解決したような。しかし、どもりまくりは案外味のあっていいかもですね。
 あと地味に気になったのは、金田一の滞在費は一体誰もちなんだ。二ヶ月何もしないで座ってただけなのに。依頼人最初に死んでいるのに。映画じゃあ報酬受け取っているみたいですけど。
 おまけとして、作者が金田一のことを天才天才連呼してるのは、ホームズの如くマンセー主義なんだろうか。
10年1月
蒼空時雨
綾崎 隼 著
メディアワークス文庫
評点:6点
偶然の「雨宿り」から始まる、切ないラヴ・ストーリー。ある夜、舞原零央はアパートの前で倒れていた女、譲原紗矢を助ける。帰る場所がないと語る彼女は居候を始め、次第に猜疑心に満ちた零央の心を解いていった。やがて零央が紗矢に惹かれ始めた頃、彼女は黙していた秘密を語り始める。その内容に驚く零央だったが、しかし、彼にも重大な秘密があって…。巧妙に張り巡らされた伏線が、いくつも折り重なったエピソードで紐解かれる、新感覚の青春群像ストーリー。第16回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作。
・ ・ ・
 初メディアワークス文庫! 何となく、これこそが自分の目指す道ではなかろうか、という感じのテーマの文庫です。わくわくしながら、読んでみます……なるほど。電撃が求めているのはこんな感じなのか。
 萌えとかそういう類のものがなくなって、青年らの恋愛模様。子供が産めない、人殺しの子供、交通事故、不治の病、血の繋がらない兄妹の恋愛等々、それぞれの悲劇みたいな印象です。個人的には物語を盛り上げるために、やや悲劇オーラを過度に押し出しすぎているかなという印象を受けます。あとは、キャラの年齢は上がっている割にはやや幼い思考のキャラが多かった印象。舞原の好きな先輩女性は終始うざかった気が。物語に触れると、心理過去に重きを置いているところが好印象。過去にあった悲劇に視点をあてるばかりで現時点での動きがほとんどないのはやや退屈なところでしょうか。ただ、主人公であるべき人が最初以外登場していないのはいかがなものか。外の先輩らの話なんざどうでもいい! この先輩にこそ何かしら踏み込んだところが欲しいですぞ!じゃないと最後の行動とか告白とかが妙に蚊帳の外過ぎる印象を受けます。それ以外はおおむね楽しめました。
ほしのこえ The voices of a distant star
大場 惑 著
MF文庫ダ・ヴィンチ
評点:7点
「秒速5センチメートル」の新海誠、衝撃のデビュー作を小説化 このメールがノボルくんに届くまで1年--ノボルくん、わたしのこと忘れちゃうかな…… 中学生のノボルとミカコは仲の良いクラスメイトであったが、3年生の夏にミカコが国連軍選抜メンバーに抜擢、二人は宇宙と地球と離ればなれとなってしまう。携帯電話のメールで連絡を取り合う二人だったが、ミカコが乗る宇宙船が地球を離れるにつれ、その時間のズレは決定的なものへとなっていく……。 *本書は、2002年7月に出版したMF文庫J『ほしのこえ』に加筆修正を加え、新装版で出版したものです。新たに「新装版 あとがき」を加えました。本書はフィクションです。
・ ・ ・
 今更のように読む。実は新海さんの話で唯一ハッピーエンドはこれだけなのだろうか、と思ってしまいました。映像のときはトゥルーエンドくさいですが、漫画はハッピーエンドよりで、小説では完全なハッピーエンドですね。よかったよかった。
雲の向こうは、小説版では「大人なんて!!」って言いたくなるような結末でしたし、(確かに映像でも冒頭あれだからああなんだろうが)、秒速はもうあれですからね。いや、好きなのは好きですが。茫漠ブームまたこないかな。何はともあれ、楽しめました。
偽物語(上)(下)
西尾 維新 著
講談社BOX文庫
評点:6点
大人気『化物語』シリーズ、待望の最新作! 阿良々木暦の青春は、常に怪異と共にある!?前作からの主要キャラに、今度は暦の二人の妹<ファイヤーシスターズ>が加わって大暴れ!シリーズ待望の最新作!
・ ・ ・
悪乗りの極地。というか、メインキャラじゃなくて一個前の主役がメインになるのはこのシリーズの宿命なのか。それにしても、この作者は小学生が大好きですね。どの話でもしっかり贔屓されているのが良く分かります……。しかし、傷物語というか戯言というか、この人の描く本当の悪人はめさめさやる気ないですな。いつも。「血の繋がらない妹なんて萌えるしかないだろうが!」って、いいんじゃないです?
傷物語
西尾 維新 著
講談社BOX文庫
評点:7点
全てはここから始まる!『化物語』前日譚! 全ての始まりは終業式の夜。阿良々木暦と、美しき吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハードアンダーブレードの出逢いから――。『化物語』前日譚!!
・ ・ ・
化物語の前の話。相変わらず西尾維新氏は敵が強そうでさっぱりよわいという不思議な描写です。とはいえ、一冊の本にしては綺麗にまとめられています。特に、綺麗にエンディングを迎えているのが好印象。決してハッピーエンドではなく、化物語で語っていたのにも納得できるエンドが。ていうか、この頃の主人公はすでに大概変態ですね
日の名残り
カズオ イシグロ 著
ハヤカワepi文庫
評点:2点
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
・ ・ ・
カズオ・イシグロ二作目挑戦。 ごるごっさ面白くない……。もうね、超絶石頭で人の言うことを全く聞かず、見下しており、人間の情の欠片もないわ、鈍感を通り越した悪意にも近い感情やらという寺宙がもっとも嫌いな要素を全て集めたような人が延々延々かたっているという苦痛以外のなにものでもない物語でした。最初から最後まで隙なく超絶うざいっていうのも何とも言いがたい。特に許せないのが、主人の心配している人を忙しいしー私の領分じゃないからーだけで切って捨てたのはもはや悪意としか受け取りようがなかったです……。それは気品があるというよりも、「私の仕事じゃない」と言う職人の如く、典型的な一番無能な人間の言葉だ!
でも、うん、ラノベの解釈で言うと怒られそうですがツンデレですよねこれ……。それと、最後の最後にちょっとこれから変わるかなという風な変化がありますが残り10P以外そんな要素が何一つないからえーと言いたくなります。やはり寺宙には文学の敷居はまだ高いようです。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈5〉
伏見 つかさ 著
電撃文庫
評点:6点
「じゃあね、兄貴」―別れの言葉を告げ、俺のもとから旅立った桐乃。…別に寂しくなんかないけどな。そして新学期。平穏な高校生活を謳歌する俺のもとに、奇妙な後輩が現れる。「おはようございます、先輩」俺は、黒猫の人間としての仮初めの名を知り、より深い"絆"を築いていくことになる。"妹"と"親友"。ともに大きなものを失った二人は、数多の思想が渦巻く校内で、"魔眼遣い"の少女と対峙する。"稀少能力"を持つ少女に、俺と黒猫は圧倒され、異空間へと誘われ…!!"日常"と"非日常"が交差するとき、物語は始まる―。
・ ・ ・
ああ。主人公完璧なオタクっていうかディープなオタクと化していました。というか、突っ込みの方法がどんどんそっちのほうに傾倒していってますし、描写も変態であることが強調されていました。というか、化物がたりの主人公みたいな感じになりつつあります。個人的にはそういう風に染まるよりは、キョンみたいなスタイルのほうが良かったなあと思うのですが、それは人の好きずきということで。しかし、作者はっちゃけてるな。
あと、最後の章の話は個人的にはかなり蛇足だと思うのですが……いや、変なところだけリアリティがあるといえばあるというんでしょうが、個人的にはもう少し頑張って欲しいなと思いました。
魔法少女は忘れない
しなな 泰之 著
集英社スーパーダッシュ文庫
評点:5点
ある日突然やってきた妹、みらいと共に過ごすようになって半年。高校生・北岡悠也は、まだ彼女との距離感を掴めずにいる。わからないことだらけの妹について、知っているのはたったひとつ―みらいが昔、"魔法少女"であったこと。自分の知らない世界を生きてきた少女に、兄として向き合う奇妙な日常。幼なじみの千花や親友の直樹、その助けを借りながら、季節は移ろい巡ってゆく。忘れ得ない大切な日々を分け合う、四人の少年少女の物語。悠也は魔法少女を忘れない。
・ ・ ・
何と言うか超絶スタンダードなラノベでした。何と言うか、ここまで設定の無駄使いをしているのは珍しい。勿体無いお化けが出てきそうなレベルです。だって、ぶっちゃけこれ魔法少女でも何でも別にいいよね(あ)。ストーリーは分かりやすい感動物。キャラクター配置も分かりやすいものとなっています。まさに王道中の王道。こういうのはこういうのでほのぼのしてありだなーと思います。
10年1月