前を歩くやつのマントが、バサバサとなびく。
そんな後ろ姿を眺めながら、俺は内心でため息をついた。
――全く。やってられないよ。
この男は、本当に我が侭なやつだ。
俺には全く意味が分からない。
とんでもなくがめついときもあるし、困っている人に対して、とても気前の良いときもある。
そう。行動に一貫性が全くないのだ。
顔だけを見れば、なかなか整っていて女の子にもてそうな顔をしているけれど、いつもいつも好き勝手にやってくれる。
今もずんずんと、後ろを振り返りもせずに歩いてた。
俺は手に持った剣をもてあそびながら、少しだけ思い返してみる。
ある偉い人の我が侭に付き合ってから、普通の人なら怒ってしまうようなことなんかも、愚痴一つこぼさずにお人好しなマネをする。
かと思いきや豪華な墓を荒らして金儲けをしたり、とんでもなく悪いことをしたりもする。
それがばれて追いかけ回されたというのに、さっきも夜中に立ち入り禁止と言われた城に乗り込んで、つまみ出されたばかりだ。
しかも今度は魔法で姿を消してまで進入するっていう、こそ泥そのもの行為に。
そういえば、じいっと女物の下着を睨み付けていたこともあった。ギャグならいざしらす、その時の表情が真面目すぎて逆に怖かったのを思い出せる。結局買わなかったが。
しかし……自分の意志というものが、この男には本当にあるのだろうか?
ここまで、行動を説明できない人物は他には存在しないだろう。
はっきり言って、ちょっと頭のおかしくなった怪しい奴と言っても過言じゃないレベルだ。
まさか自分の意志なんてものがなくて、誰かに操られているのではあるまいな……。
え?
何で俺は、そんなやつに付いて行ってるかって?
別に好きで付いて行っている訳じゃないよ。
俺は『ルイーダの酒場』という所にいたら、偶然選ばれてしまった、しがない戦士さ。