いつか忘れ去られても

 

 その日、僕は買われて……いや、新しいご主人様に貰われたんだ。
 僕は運がいいようで、ご主人様は僕のことを気に入ってくれたようだった。
 ずっと僕と一緒にいてくれて、ベッドの中まで連れて行ってくれた。そして、僕のことを優しく抱きしめながら、眠ってくれた。
 そんな新しいご主人様を僕も一発で好きになった。
 そうやって僕たちの新しい生活は始まった。
 それから、数日。
 良好な関係は長くは持たなかった。
 僕は他のやつみたいにうるさくぜずに、いつも静かにおとなしくしていた。
 けれども、そんな僕の反応を気に入らなかったのか。ご主人様は僕に飽きて、あまり構ってくれなくなった。
 何でだろう。
 ベッドに連れて行ってくれることもなくなった。
 家の外にすら連れて行ってもらえすらしなくなった。
 僕のことすら見てくれなくなった。
 何故?
 どうして?
 僕はぼんやりと理解した。
 ご主人様は、もっとうるさく、騒がしくして欲しかったんだ。
 そんな風に思っても、僕にはどうすることも出来なかった。
 だって、もう一月以上、"メール"も"電話"もこないんだから……。