未読一件

 

 仕事の終わりにメールをチェックする人は多いのではないだろうか。少なくとも私はそうだ。
 午後十時を過ぎたところで、今日最後のメールのチェックをしていると、後輩が、先輩ちょっといいですかー、と声をかけてくる。どうやら、未読のメールが一件あるようなのだが、何処にも見当たらないようだ。個人メールのように、スパムメールだろうと割り切ってしまうことも出来ないため、手伝って探してあげる。しかし、どういう風に探しても見つからなかった。ただ単に間違って表示されているだけだろうか。でも、何故だか未読一件の表示が気味悪く思えて仕方ない。
 そう言えば、先輩知ってますか。決して見つからないメールの話。でも、そのメールを見つけだすことが出来たなら、とても良いことがあるんですよ。しかも、その日のうちに見つけないと次の日にはなくなっているんです。
 馬鹿馬鹿しい。仕事中にへらへらと無駄口を叩く後輩に苛つきを覚えるが、そんなものは有り得ないと、意地でも見つけ出してやろうという気がおきてくる。
 しかし、探せど探せど、結局見つからなかった。今まで受信したメールを全て開いたにも関わらず、表示は変わらず未読一件のまま。
 何を意地になっていたのだろう。こんなもの、単なるメールのバグなだけじゃないか。終電も近くなったので、私は帰ることにした。徒歩で通っている後輩は、もう少し粘ってみるそうだ。この後輩は本気で先ほどの話を信じているのだろうか。私は半ば呆れつつ、家路についた。帰る間際に見たモニターには、未読一件と無機質に表示されていた。
 次の日の午後十時を過ぎたところで、私はメールをチェックする。未読メールが一件と表示されているのだが、何処にもそのメールは見当たらない。ふと、昨日の後輩のことを思い出してしまう。そういえば、あの後輩、今日はどうしたのだろうか?